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{ナノチューブ実用化研究センターの最新の研究成果の紹介} 単層カーボンナノチューブ被覆合成糸を用いた高性能・頑丈・柔軟なウェアラブル・スーパーキャパシタを開発

2019年7月19日

|研究のポイント

  • スーパーグロース法で作製した単層カーボンナノチューブ(SG-CNT)でコーティングされたカーボンナノチューブ被覆合成糸を用いて、高性能で頑丈、さらにテキスタイルに編み込むことができるほど柔軟な蓄電デバイスを開発。

  • 高い蓄電・充放電の性能を備え、さらに携帯性や堅牢性に優れることが要求される革新的なウェアラブル・アプリケーションへの貢献。

|研究の概要

本研究はインド科学技術省(Department of Science and Technology, Government of India)の研究助成により、ナノチューブ実用化研究センターのセンター長畠賢治とインド工科大学(IIT Bombay)の教授Chandramouli Subramaniamおよび同大学の博士課程の学生Mihir Kumar Jha両氏との共同で実施され、2019年4月29日にACS Applied Materials & Interfaces誌に掲載されました。

|研究の詳細

人と周囲の環境との主要なインターフェースとなる衣服と小型化されたコンピュータを組み合わせて、ウェアラブルコンピュータ、パーソナライズされた医療などを可能にするインテリジェントな衣服が登場しつつあります。

このような衣服のためのテキスタイルの技術的な課題として電気エネルギーを貯蔵・充放電するシステムの開発があります。システムには高いエネルギー密度と電力密度を備えることが要求されます。さらに衣服の一部として様々な機械的な負荷に耐えることができることも必須となります。

本研究ではこのようなウェアラブルなエネルギー貯蔵システムを製造するためのシンプルなプロセスを開発しました。新しいシステムの素材には当センターで開発されたスーパーグロース法(SG法)で作製された単層カーボンナノチューブ(SG-CNT)を使用しています。SG-CNTは高純度、高い均質性、高アスペクト比を備えています。このSG-CNTを分散させたCNTインクを作製し、合成糸をこのCNTインクに浸漬してSG-CNTで均一にコーティングされた糸状のCNTワイヤを作製します。このCNTワイヤを電極として電解シートに編み込むことで、各接点にsewcapと呼ばれる電気エネルギーを貯蔵するユニットを形成しました(図1aを参照)。

図1(出典:ACS Appl. Mater. Interfaces 2019112018285-18294)

Sewcapは柔軟なので、その柔軟性を保ちつつ温度や湿度などの環境の影響からsewcapを保護するために、ちょうどIDカードをラミネート加工するようにsewcapの全体をポリマーシートの間に積層します。ラミネート加工されたsewcapを編み込んだテキスタイルは洗濯、折り曲げ、ハンマーで叩くなどの複数の機械的な強度の試験の結果、優れた堅牢性を備えていることが示されました。

Sewcapのエネルギー密度(~ 30Wh/kg)と電力密度(~ 3511W/kg)は、既報の数々のデバイスよりも優れています(図1e、1fを参照)。また、本プロセスのメリットの一つにシンプルでスケーラブルなことがあります。いくつものsewcapを結合することでシステムの総エネルギー貯蔵量を増やすことができます。また、このプロセスは通常のテキスタイルの製造プロセスに組み込むことが可能です。

 

論文タイトル:Interwoven Carbon Nanotube Wires for High-Performing, Mechanically Robust, Washable, and Wearable Supercapacitors(高性能かつ機械的に堅牢で丸洗い可能なウェアラブル・スーパーキャパシタのための編み込みカーボンナノチューブワイヤ)

著者:Mihir Kumar Jha(IIT Bombay)、畠賢治(ナノチューブ実用化研究センター)、Chandramouli Subramaniam(IIT Bombay)

掲載雑誌:ACS Applied Materials & Interfaces

DOI:10.1021/acsami.8b22233

 

ナノチューブ実用化研究センター:研究成果(論文リスト 2019)