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{ナノチューブ実用化研究センターの最新の研究成果の紹介} 高品質な単層カーボンナノチューブのミリメートルスケールの成長

2019年7月26日

| 研究のポイント

  • 窒化アルミニウムに鉄ナノ粒子触媒を安定に配置することで欠陥の少ない単層カーボンナノチューブを高い収率で選択的に成長させることに成功。
  • 高品質な単層カーボンナノチューブフォレストを任意の基板表面上に直接成長させる技術の開発に大きな進展。

 

| 研究の背景

化学気相成長(CVD)法での効率的な単層カーボンナノチューブ(SWCNT)の合成には一般的に酸化アルミニウム(Al2O3)下地が利用されます。Al2O3下地は安定で密な触媒ナノ粒子の配置が可能で、Al2O3下地層からはミリメートルスケールのカーボンナノチューブ(CNT)のフォレストが得られることがこれまでに報告されています。また、Al2O3下地の空隙率は鉄(Fe)触媒の寿命に影響を及ぼしますが、このFe触媒の長寿命化は長尺なSWCNTフォレストの合成にとって極めて重要です。酸化マグネシウム(MgO)を用いた最近の一例以外に他の触媒下地で同様のCNTの成長を促すナノ粒子配列を形成できたという報告はありません。これは窒化アルミニウム(AIN)も同様です。AIN下地上のニッケル(Ni)やFeの触媒粒子から多層カーボンナノチューブ(MWCNT)の合成に成功したことが報告されていますが、これらのMWCNTはフォレスト構造を形成しておらず、構造の制御は十分できているとはいえません。また、AIN触媒下地上での高収率なSWCNT成長はこれまでに報告されていませんでした。

 

| 研究の詳細

本研究では反応性スパッタリングでAINとFeをシリコン基板上に連続積層させた触媒下地層を作製し、これを管状炉にて750℃で15分間の加熱後、雰囲気ガス(H2 : N2 = 9 : 1)中で5分間保持し、Fe触媒ナノ粒子を形成しました。ついで、水分添加CVD法を用いて750℃で10分間の成長時間によってこの触媒下地層にCNTを成長させましした。

高さ900μmのCNTフォレストが合成され、これはこれまでに報告のあったAIN下地層上のCNTフォレストの成長よりも高いものです。合成されたCNTは、ラマン分光法によるCNTの品質評価の基準となるG/D比が10で、これは高収率CNT成長に典型的な欠陥の少ないCNTであることを示唆しています。フォレスト中にはSWCNTが存在することが観察され、AIN下地上の触媒が成長時間の10分間にわたって比較的良好な安定性を保っていたと分析されました。

合成されたCNTの分析により、△平均直径が3.0 nmであること、△単層の選択性が99 %と推定されること、△観察された層数の選択性と直径はAl2O3下地層上の成長とほぼ同じ値であることが示され、AIN下地はSWCNTフォレストの成長に適切なサイズと密度の安定した触媒ナノ粒子アレイの形成が可能であることが分かりました。

AIN下地上にはFe触媒ナノ粒子が均一に配置されており、この触媒のサイズと密度はSWCNTの効率的な成長が報告されているAl2O3と同じでした。また、AIN下地上のFeの原子濃度は6.0%で、Al2O3とほぼ同じ値を示すことも明らかになりました。この濃度はSWCNTを成長させるには十分であって、しかもCNTが二層になるほど過剰でもない状態です。これらの事実からFe触媒のオストワルド熟成と表面下拡散が緩やかであったことを示唆されます。CNTの成長を阻害するオストワルド熟成と表面下拡散が緩やかであったことで、Fe触媒の寿命が十分に長く保たれ、背の高いSWCNTのフォレストが形成できたと考えられます。Al2O3と同様に、AINの蒸着方法が、SWCNTの効率的な成長に不可欠の安定で密な触媒の配列の形成に影響を及ぼすことが明らかになりました。

本研究では、特別な追加処理なしにAIN触媒下地層から高効率にSWCNTを合成することができ、SWCNTの収率と層数の選択性の向上は、CNTの成長を阻害するオストワルド熟成と表面下拡散を抑える適切なサイズと密度の触媒ナノ粒子の安定した配列の形成が支えることを実証しました。

 

論文タイトル:Millimetre-scale growth of single-wall carbon nanotube forests using an aluminium nitride catalyst underlayer(窒化アルミニウム触媒下地を用いた単層カーボンナノチューブフォレストのミリメートルスケールの成長)

著者:Takashi Tsuji(ナノチューブ実用化研究センター), Naoyuki Matsumoto(ナノチューブ実用化研究センター), Hirokazu Takai(日本ゼオン), Shunsuke Sakurai(ナノチューブ実用化研究センター), Don N. Futaba(ナノチューブ実用化研究センター)

掲載雑誌:MRS Advances, 4(3-4), 177-183. (02 January 2019)

DOI:10.1557/adv.2018.653

 

ナノチューブ実用化研究センター:研究成果(論文リスト 2019)